耳の聞こえない人を助ける、聴導犬って? 〜受け入れるお店に知ってほしいこと〜

2018.06.04

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こんにちは、Bmaps 広報担当の岸田です。

みなさんは、聴導犬(ちょうどうけん)を知っていますか?

耳が聞こえなかったり、聞こえづらかったりする人をサポートする犬のことです。

聴導犬の他にも、手足に障害のある人をサポートする介助犬(かいじょけん)、目が見えない人をサポートする盲導犬(もうどうけん)がいます。これら3種類の犬のことを、補助犬(ほじょけん)と言います。

補助犬の中でも、聴導犬は一番頭数が少ないので、見たことがない人もいるかもしれません。

聴導犬がどうやってお仕事をしているか、気になりますよね。

そこで早速、聴導犬に密着したいと思います!

ご協力くださったのは、NPO法人MAMIEの安藤 美紀(あんどう みき)さんと、息子の一成(かずなり)さん。

そしてこちらが……

生まれつき耳が聞こえない安藤さんをサポートする、聴導犬・アーミです!

安藤さんのそばで健気に待機しており、とてもかわいいです。

ですが、いくらかわいくても、アーミに触ってはいけません。

アーミは、聴導犬と書かれたケープを着ています。

聴導犬がケープを着ているのは、仕事中だということの合図。

落ち着いて仕事ができるように、聴導犬に触れたり、声をかけたりするのはやめましょう。

アーミに「頑張れ!」という思いを込めながら、“優しい無視”で密着取材を進めたいと思います。

岸田奈美(以下、岸田):安藤さんは、いつから聴導犬と一緒に生活をしているんですか?

安藤美紀(以下、安藤):2009年3月からなので、もう9年目になります。最初はレオンという聴導犬を迎え入れて、一緒に暮らしていました。

岸田:最初はアーミじゃなかったんですね!

安藤:はい。レオンが去年12月で引退したので、アーミと交代しました。

岸田:アーミと安藤さんが出会ったのはいつ頃ですか?

安藤:2016年の夏です。

岸田:えっ!2年も前から?

安藤:まずは私の家にアーミが遊びに来る日を作って、最初は一泊から、次に二泊、三泊……と増やしていって、少しずつ一緒にいる時間を長くし、アーミに慣れてもらいました。

岸田:なるほど。突然やってきて「今日からあなたの聴導犬です!」とはならないんですね。

安藤:その頃アーミは埼玉に、私は大阪に住んでいました。だから宿泊は、アーミが新幹線や飛行機に乗る訓練も兼ねていたんです。そうした訓練を乗り越えて、アーミが聴導犬の試験に合格したのが2017年の12月です。

岸田:レオンは今、どうしてるんですか?

安藤:私の家で、家族とアーミと一緒に暮らしています。聴導犬のお仕事から解放されて、リラックスしていますよ。

岸田:悠々自適な引退生活ですね。

 

聴導犬はどんな仕事をするの?

岸田:聴導犬はどうやって安藤さんをサポートするんでしょう?

安藤:耳が聞こえない私の、耳代わりになってくれるんです。

岸田:音を知らせてくれるということですか?

安藤:はい。例えば自宅にいる時、私はインターホンの呼び出し音が聞こえません。電子レンジや炊飯器のアラームも聞こえないので、そういった日常の音をアーミが知らせてくれるんです。

岸田:確かに……そう考えれば、音が聞こえないと困ることって、いっぱいありますよね。

安藤:不便なだけではなくて、危険なこともあります。例えば、火災報知器の音や、サイレンの音も聞こえません。

岸田:そうか!それは気づけないと大変ですね!

安藤:アーミが音の種類を覚えて、音が鳴ったら私をその場所まで連れていってくれたり、身体に触れたりして教えてくれるんですよ。

岸田:家の中だけではなくて、外を歩いている時もですか?

安藤:外では自動車のクラクションや、自転車のベルの音を教えてくれます。

岸田:あっ、ちょうど自転車が来ましたよ。

 

チリン、チリーン!とベルの音を鳴らす自転車。このままではぶつかってしまいそうですが、安藤さんは聞こえません。果たして……!

岸田:お……おお……!?

岸田:立ったーーー!アーミが立った!


安藤
:こうして身体に触れて知らせてくれることもあれば、急にその場で止まってくれることもあります。車が横から近づいてくるなどして「これ以上前に行ってはいけない!」という時は、止まることが多いですね。

岸田:本当に安藤さんの耳の代わりになって、音を知らせてくれるんですね。

安藤:はい。私が車を運転している時は、救急車のサイレンを教えてくれます。救急車が近づいたら道を譲らなければいけませんが、アーミがいないとそれも気づきませんから。

岸田:車ではどうやって教えてくれるんですか?

安藤:後部座席で寝ているアーミが立ち上がります。

岸田:バックミラーで見えたり、振動で気づいたりできますね。場所によって知らせ方も違うとは。

聴導犬がいて、一番助かることは何?

水を飲んで休憩するアーミ。安藤さんが持ち歩いている折りたたみ式のカップに、自販機でミネラルウォーターを買って注ぎました。

岸田:聴導犬と一緒に生活していて、一番助かることはやっぱり音を知らせてくれることですか?

安藤:それもありますが、実は聴導犬はいるだけで役に立ってくれるんです。

岸田:いるだけ?どういうことですか?

安藤:聴覚障害があることって、補聴器をつけていない限り、外見からはわかりづらいんです。でも聴導犬を連れていると、私に聴覚障害があるということに気づいてもらいやすいんですよ。

岸田:ケープに「聴導犬」って書いていますもんね。聴導犬の仕事を知らなくても“聴”って書いていたら、なんとなく耳が悪いって想像するかも。

安藤:聴導犬ユーザーになる前は、電車に乗っている時に、車掌さんのアナウンスが聴こえなくて遅延情報などがわからず苦労しました。孤立感もありましたね。でも今は、アーミが隣にいるだけで周りの人から「電車が遅れているみたいです」「5分後に発車するそうです」と教えてもらえることが増えました。

岸田:それは助かりますね!

安藤:ペンとメモで筆談してくれる人や、勉強中の手話を使って話してくれる人もいました。「こんなところで手話が役立って嬉しい」と言ってもらえた時は、私も本当に嬉しくなりましたよ。

岸田:アーミがいることで、周囲とのコミュニケーションが増えたんですね。素敵です。

聴導犬を連れて飲食店に入る時、困ることって?

アーミが水を飲んだところで、私たちも休憩することになりました。入店したのは、大阪の福島にある、「エスラスカフェ」。自家製メニューが豊富な、ナチュラルテイストのカフェレストランです。

岸田:今は「身体障害者補助犬法」があるから、どんなお店にも補助犬を連れて入ることができるんですよね。

安藤:そうなんですが……。

岸田:あれ?

安藤:実際にアーミを連れて行くとお店の人が困ってしまったり、入店を断られたりすることもよくあります。断られることにも慣れてしまいました。

岸田:ええっ!それは悲しいですね。

安藤:まだ、補助犬や聴導犬について知らない人もいますからね。ペットと間違う人もいるみたいです。

岸田:店長やマネージャーならまだしも、何も知らないアルバイトや新人だったら、突然のことで慌ててしまうのかも……。

安藤:でも、嬉しいこともありましたよ。初めは入店を断られた店へ、後日もう一度行く機会があって。また断られるだろうなと思っていたら、二度目は受け入れてもらえました。

岸田:二度目で対応が変わったんですか。それはまたどうして?

安藤:初めはびっくりして断ったみたいなのですが、その後に店員さんが聴導犬について調べてくれたんです。それで、受け入れようと決めてくれたらしくて。私の説明に耳を傾けてくれたことに感動しました。

 

飲食店では聴導犬ユーザーにどんな配慮が必要?

岸田:こういった飲食店では、聴導犬ユーザーに対してどんな配慮やサポートを行うのが良いんでしょうか?

安藤:実は、飲食店の店員さんに準備してもらうことや、特別な設備は必要ないんです。

岸田:えっ?それは意外でした。

安藤:聴導犬は基本的に、どこでも待っていられるように訓練しています。今もこうして、アーミはテーブルの下で待機してくれますし。だから、個室や広いスペースが必要というわけではないんです。

岸田:いつの間にそんなところへ……。大人しすぎて気づかなかったです。

岸田:アーミの下に敷いてある布は?

安藤:犬用のマットです。アーミが伏せた時に毛が床へ落ちないようにするのと、アーミが自分の場所だと認識しやすいように持ち歩いています。

岸田:“犬”と聞いた時に多くの人が不安に思うのはトイレだと思うんですが、アーミはどうしているんですか?

安藤:外出する時は、駅の多目的トイレや、広めのトイレを使います。これも決まった時間にするように訓練しています。だから、お店のトイレを使ったり、汚したりすることはありません。

岸田:聴導犬が来たら「何か特別な準備をしなければならない!」と思うことが、そもそも違うんですね。

安藤:はい。聴導犬について知ってくれている、受け入れてくれる、という気持ちだけで十分です。しいて希望するなら、カウンター席よりもテーブル席の方が嬉しいということくらいでしょうか。

岸田:それはなぜですか?

安藤:聴導犬との距離が近いので、なにかあった時に聴導犬の反応をすぐに感じることができるからです。あとは、他のお客さんが多い時に、できるだけアーミが落ち着けるようにと、個室や空いている席を案内してもらえたこともありました。店員さんの気持ちがとても嬉しかったです。

プラスαのお声がけが、聴導犬ユーザーのファンを生むのかもしれません。他にもこの写真のように、耳の聞こえないお客さんに対して、筆談ができるボードを使ってコミュニケーションを取ってもらえると助かるそうです。

ほじょ犬ウェルカム!の姿勢を示そう

岸田:特別な配慮は必要ないのに、聴導犬についてあまり知られていないだけで入店を断られてしまうのはやっぱり残念ですね。

安藤:そうですね。そんな時は、「ほじょ犬シール」を貼っているお店を見ると安心します。

エスラスカフェの入り口には「補助犬と一緒にどうぞ!」と書かれたシールが貼ってあります。この他にも、厚生労働省が推奨・配布している青い「ほじょ犬マーク」などいくつかデザインがあります。

岸田:「補助犬について理解していますよ、どうぞお越しください」と言ってくれるお店はやっぱり安心しますよね。実は私たちが作っているバリアフリー地図アプリ「Bmaps(ビーマップ)」にも、「ほじょ犬マーク」があるんですよ。

Bmapsには、ほじょ犬マークを掲示している店・補助犬を快く受け入れている店・補助犬を連れて入店できた店を示す「ほじょ犬対応」アイコンがあります。

岸田:飲食店などのお店で働いていて「うちのお店は、補助犬ユーザーを歓迎しますよ!」という人がいたら、ぜひ自分のお店を登録してほしいですね。断られないお店というのがわかるだけでも、補助犬ユーザーの助けになりそうです。

今回、撮影にご協力いただいた「エスラスカフェ」も投稿しました。車いすユーザーや補助犬ユーザーに優しいカフェです。

ほじょ犬もウェルカム!取材に協力してくださったお店

自家製メニューが豊富な、ナチュラルテイストのカフェレストラン

自家製スパイシーカレーやパスタが人気のカフェレストラン。木の机やカウンター、かわいらしいハンドメイドのグッズが並ぶ物販コーナーなど、ナチュラルテイストな店内にほっこり和みます。

営業時間が長く、ランチ・カフェ・ディナーとさまざまなシーンで使いやすいのも嬉しいポイントです。

入り口にはスロープがあり、ほじょ犬を歓迎するステッカーの掲示も。事前に電話で相談すれば、車いすで入店しやすい席も用意してくれます。

店舗名
エスラスカフェ (esras.Cafe)
住所
大阪府大阪市福島区6-14-18
アクセス
JR環状線福島駅より徒歩約5分 JR大阪駅桜橋口・地下鉄四つ橋線西梅田駅より徒歩約10分
電話
080-8913-1467
段差
0段(スロープ)
設備
  • フラット
  • 広い
  • 明るい
  • ほじょ犬対応
  • 禁煙・分煙

皆さんもBmapsをダウンロードして、無料で投稿してみてください。

さいごに……「ほじょ犬って知ってる?」

岸田:安藤さんとアーミから、たくさんのことを教えてもらいました。今日は本当にありがとうございました。

安藤:こちらこそ、ありがとうございました。私とアーミのことを通じて、補助犬や聴導犬について知ってくれる人が増えれば嬉しいです。

安藤さんへの取材の手話通訳をしてくださったのは息子の一成さん。手話シンガーとして活躍されています。2017年4月にオリジナルソング「ほじょ犬って知ってる?」を発表。

補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の仕事について、歌と手話で楽しく学べる、素敵な楽曲です。ぜひ聴いてみてくださいね。

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